有機化学美術館へようこそ 佐藤健太郎

su96

2011年10月30日 01:28

そろそろ化学の話題という事で、化学系の私からマニアックな本を1冊。
「有機化学美術館へようこそ」という本です。
もう、「化学すら苦手なのに、有機化学、ひぇ〜」なんて方も多いかと思いますが。

化学、というと、元素記号を線で結んで・・・っていうアレがそうです。
モデルという形では、一般的に元素を球、結合を線で表します。
それを使って色々面白い形の、余り実用的ではない遊び心満載の化学者たちの話です。

例えば、プロペラの形をした「プロペラン」、輪になって阿波踊りを踊っている姿を模した「シクロアワオドリン」
更には、人の形をした「ナノプシャン(ナノキッド)」なんてモノもあります。
こんな感じで、帽子をかぶせて様々な職業を付けたりして、本当に遊び心満載です。
ちなみに、この「ナノプシャン」はイグノーベル賞を受賞しています。

他に、架空の物質である、十字の形をした「ヘルベタン」と六芒星の形をした「イスラエラン」はどっちの方が安定しているか、
という議論を、スイスとイスラエルの化学者の間で毎年エイプリルフールに繰り返される話があったり、
世界的風潮のせいでノーベル賞を取れなかった、人工がん実験に世界で初めて成功した日本人山極勝三郎博士の話があったり、
また、一番臭い化学物質は?とか、一番毒性の強い物質は?とか、最強の酸、最強の発がん性物質など掲載されていたり、
化学に興味がある方なら、楽しく読めるのではないかな、と思います。

科学は有効利用という視点を重視し、発展してきた経緯があります。
その有効利用は、人々の生活を便利にし、物質的豊かさや経済的豊かさを与えてきましたが、
その反面、環境破壊を引き起こし、また、生み出されたものの処分方法も未だ問題は山積みとなっています。
そんな事から、特に化学はある意味で「嫌われ者」として見られていますが、
このような遊び心にあふれた分野がまだまだ活発であるのは、非常にいい事だな、と思います。

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