プラスチックの話-1:熱に融けたり融けなかったり

su96

2011年11月02日 03:06

さて、今回はプラスチックの話です。
私が前職において深く携わってきた分野です。

まず、「プラスチック」と聞いて、何を思い浮かぶでしょうか?
熱に融ける、リサイクル、埋め立て、ビニール袋、軽い、柔らかい・・・色々あるかと思います。
じゃあ、「『プラスチック』って何?」「『プラスチック』の定義は?」と言われると、
非常に難しい問題であります。

プラスチック。英語に直すと「plastic」。
日本語訳にすると、「可塑性の」すなわち「融ける性質を持つ」という意味になります。

しかし、プラスチックには熱に融けないものもあります。
恐らく一番有名なのはメラミン樹脂。灰皿やプラ食器として使われます。
あとは、接着剤。あとは、パテ。アレもプラスチックの仲間です。
コレらをまとめて「熱硬化性樹脂」と呼びます。
温度によって固化するプラスチックの事です。

対して、非常に馴染みの深い、例えばビニール袋、ポリ容器、その他諸々、
熱を加えると融けたり、変形したりするプラスチック
これらを「熱可塑性樹脂」と呼びます。

熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂、違いは分子構造です。
プラスチック。「樹脂」とも「ポリマー」とも呼ばれますが、
化学的に言うと、「高分子」という仲間になります。
分子の単位が連鎖して繋がって、一本の長い分子になったものです、
と言うと非常に分かりづらいので、例えてみます。

ある金属の輪っかがあります。これを「分子の単位」とします。
金属の輪っかは、長く繋げて行く事により、一本の鎖になります。
これが、プラスチックです。

先に出てきた、「熱硬化性樹脂」と「熱可塑性樹脂」。分子構造が違うと書きました。
では、具体的にどう違うのでしょうか。

分子レベルで見ると、
熱可塑性樹脂は、鎖が絡み合って構成されているのに対し、
熱硬化性樹脂は、鎖かたびらのように、編み目状になって構成されています。

分子は、熱によってエネルギーが与えられ、自分で自由に動こうとします。
熱を与える事で、熱可塑性樹脂は、ただ絡み合っているだけなので、絡み合いを解いて自由に動けるようになります
これが、熱による変形であったり、熱で融けたり、という事につながります。

対して、熱硬化性樹脂は、鎖かたびらのように網目状になっているので、自由に動く事が出来ません。
だから、熱によって、融けたり変形したりしにくいのです。

また、熱硬化性樹脂は、2つの薬剤を混ぜて、作りたい型に流し込み、熱を加える事で作られます。
対して、熱可塑性樹脂は、熱によって融かして、型に流し込み、冷やす事によって作られます。
ですので、熱硬化性樹脂は「クッキー」、熱可塑性樹脂は「チョコレート」という比喩もされます。

それぞれ、様々な特徴があり、用途に応じて使い分けられています。
また、用途に応じて、同じ種類のプラスチックでも、製造工程によって性質を変える事が可能です
熱に融ける、融けないの他に、硬い、柔らかい、伸びる、薬品に強い、反復運動に耐える、など様々です。
中には、軽い事から金属の代わりに利用する、という事もあります。
特に、今では飛行機や自動車の外装において、開発が進んでいます。

次回のプラスチックの話では、そういったところに触れたいと思います。

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